🐚 忘却の海:オムナイト
2005年7月発売 PCG 拡張パック「まぼろしの森」023/086 / ●(コモン)・実店舗:★★★☆ ショーケース内にいるかもしれない程度。
・ネット通販:★☆☆☆ ネット通販で入手しやすく、コレクションの第一歩に最適です。
Illus.Kenkichi Toyama (とやま けんきち)氏
【絵師の特徴】
太くはっきりとした主線に、どこかおもしろくもあり、温かみがある。レトロポップなタッチが特徴です。キャラクターの感情をストレートかつ愛らしく表現する表現力にたけています。またゲームのステータス異常のような演出を落とし込む遊び心も持ち合わせています。2004年~2005年の期間ポケカへ参加。手掛けた作品は数点のみ。株式会社ゲームフリーク所属のクリエイター・グラフィックデザイナー。「ポケットモンスターエメラルド」のグラフィックデザインをはじめ歴代の本編ゲームにおいてポケモンのキャラクターデザインUIデザイン、2Dドットグラフィックの
メイン担当として深く携わっています。
💧 「本家ゲームのデザイナーが描いた特別なポケカ」
コレクターの間では「失恋オムナイト」の愛称で親しまれるこのカード。なぜこれほどまでに人々を惹きつけるのか、その秘密を4つの視点から考察します。 1. 本家デザイナーが手掛けた「極小の希少作」であること。イラストを担当したとやま氏は、ポケカ専門の絵師ではなく、本家ゲームフリーク所属のメインデザイナー。歴代『ポケットモンスター』本編でポケモンのキャラクターデザインやUI(画面)デザインを手掛けてきたプロです。とやま氏がポケカに寄稿した作品は片手で数えるほどしかなく、その希少性もコレクター心をくすぐります。 2. コモンカードの常識を覆す価値であること。ポケカで価格が高騰するのは最高レアリティのカードですが、このオムナイトは最も手に入りやすい「コモン(●)」にもかかわらず、イラストに込められた「ドラマ性の高さ」だけで独自のプレミアム価値(状態が良いものは数千円〜)を確立しています。ポケカ界にある「イラストの物語性を楽しむコレクション文化」の先駆け的な存在です。 3. イラストに隠された「残酷な2つの記号」があること。手前で大粒の涙を流すオムナイトと、後ろで寄り添う2匹のオムナイト。この対比だけでも切ないですが、水中の「気泡の形」に注目すると、より緻密なストーリーが見えてきます。 ① 後ろのオムナイト2匹に浮かぶ「ハートマーク」 2匹の間に立ち上る気泡は、よく見るとハートの形をしています。これは同じ「タマゴグループ」の2匹が本能的に惹かれ合い、つがい(番い)になった決定的な瞬間。手前のオムナイトにとって、これ以上ない「失恋確定」を突きつける残酷な対比演出です。 ② 手前のオムナイトの頭上に浮かぶ「はてなマーク(?)」手前のオムナイトのすぐ上にある気泡の並びは、見方によっては「はてなマーク(?)」のように配置されています。 あまりのショックに頭の中が真っ白になり、「なぜ自分ではないのか」「嘘だろ?」と大混乱に陥っている心理描写とも受け取れます。ゲームUIデザイナーである、とやま氏らしい、キャラクターの「ステータス異常(混乱)」等を記号化した遊び心とも言えるます。 4. 2005年の時勢から見る「化石ポケモンの悲哀」 このカードが発売された2005年は、日本の人口が戦後初めて「自然減」に転じ、少子化や未婚化・独身社会が深刻な社会問題として叫ばれ始めた年です。 オムナイトは遥か昔に地球上から消え去った「化石ポケモン」。背景の2匹は「種を残す(繁殖する)側」ですが、失恋した手前のオムナイトは「子孫を残せず、歴史の闇に消えていく(絶滅する)側」の悲哀。当時のリアルな世相である「孤独・未婚化」という寂しさが、図らずも化石ポケモンの絶滅の歴史、そして失恋の涙とリンクして見える、ディープな風刺的側面も感じさせます。 この作品は「失恋」の一言では片付けられない名画。 太いレトロポップな主線で一見コミカルに描かれながらも、これほどまでに緻密で残酷な心理描写と時代背景が1コマに凝縮されています。これこそが、発売から20年以上経った今でも「名作」として語り継がれる理由だと思います。
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